Laurie Wisefield: Exploring the British Progressive Country Rock Band He Fronted

2026-02-01 01:36:00

「カントリーロック」と言えば、お膝元である米国のミュージシャン達の専売特許…そんなイメージがあります。が、60年代末から70年代初頭において英国にもカントリーを志向するバンドは存在しました。アルバート・リー率いる Heads Hands & Feet 、元フェアポート・コンヴェンションのイアン・マシューズが結成した Matthews Southern Comfort 、ニック・ロウ、イアン・ゴムが在籍した初期の Brinsley Schwarz 等…。
そんな中で今回紹介する Home(ホーム) はかなりマニアックでしょう。後にウィッシュボーン・アッシュに参加するローリー・ワイズフィールドが在籍したことで知られていますが、商業的には恵まれず、実質約3年の活動で消えてしまった知る人ぞ知るバンド。日本では現在までオリジナル作品のCD発売すらありません。

私がホームを知ったのは、当然ながらウィッシュボーン・アッシュ絡みでした。元よりテッド・ターナーよりローリー・ワイズフィールド期のウィッシュボーンを好むという変わり種だった私は、CD解説に出てくる彼の出身バンド「ホーム」が気になっており、20年程前にようやく都内の大手ショップで輸入CDを探り当てたのです。聴いてみると、アメリカナイズを標榜するウィッシュボーン・アッシュがテッド・ターナーの後釜にローリーを選んだ理由がよく分かりました。
今回はホームが残した3枚のアルバムを取り上げながら、ウィッシュボーン・アッシュとの繋がりをみていきたいと思います。

先ずはバンドの成り立ちを。と言ってもホームに関しての情報は現在でも乏しく(映像は皆無)、Wikipediaを頼ってみると、まずローリー・ワイズフィールド(guitar, vocal)とクリフ・ウィリアムズ(bass)「シュガー」というバンドで活動しており、解散後にミック・スタッブス(guitar, vocal)ミック・クック(drums)を迎えて1970年に結成したとのこと。翌71年にはCBSレコードと契約。いきなり大手からのデビューならば誰かしらのプッシュがあったと思われますが、これは不明。そして8月に『Pause for a Hoarse Horse』でデビューします。

1st『Pause for a Hoarse Horse』(71年)
米国志向をアピールしたアメコミ風ジャケット。New Riders of the Purple Sage にも通じる世界観です。
音楽的には正統カントリーロックというより、当時の英国スワンプ系に多かった「ザ・バンドをまろやかにした」感触。モヤがかった土臭さです。
ローリー曰く、Heads Hands & Feet からの刺激が大きかったのだとか。曲作りの殆んどはリードボーカル兼ギターのミック・スタッブスが担当。当時はレッド・ツェッペリンの前座もやっていたらしい。

“Pause for a Hoarse Horse”

タイトル曲。明らかにザ・バンドからの影響が感じられます。

2nd『Home』(72年)
1stの延長ながらロック度を強めた1枚。基本的にフォーキーですがプログレッシブな面も表出。プロデュースはジェネシスやクイーンで知られるジョン・アンソニー。全英41位。
ローリーのリードボーカル曲が多く、彼の存在感が増した印象。プログレ風大曲に漂う哀愁ぶりはウィッシュボーン・アッシュそっくり。
ロンドンのレインボー・シアターで行われたモット・ザ・フープルのステージではトリを食ってしまう程の評判だったとか。この年、ニューミュージックエキスプレス誌の有望新人で第5位に選出。

“Dreamer”

目の覚めるようなギターアンサンブルとドカッ、ドカッとしたドラムが特徴の英国調カントリーロック。シャープなリズムワークからも演奏技量の高さが窺えます。細かいピッキングを駆使するローリーのギタースタイルは、後のウィッシュボーン・アッシュ『Locked In(限りなき束縛)』(76年)でも活かされました。リードボーカルもローリー。

“Dear Load”

何となくジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』内の曲を連想させる作風。英国人が牧歌的な曲想を目指した時の秀逸なお手本だったのかもしれません。ギターもジョージっぽい。モヤがかった大草原の草花の風景が私には思い浮かんできます。

3rd『The Alchemist』
一転、プログレッシブな方向に向かって話題を呼んだトータルアルバム。プロデュースは引き続きジョン・アンソニー。
ルイ・ポーウェルの小説『魔法の夜明け』からインスピレーションを受けたという物語。瀕死の男から魔法の力を授かった少年が故郷を破滅の危機から救う、という「アルケミスト(錬金術師)」のストーリー。(Wikipediaより)
両面を通して完結するトータル作品。楽曲のバラエティも富み、ハードな音も披露しますが、コンセプトを貫く程の力強さはなく無理矢理感が…。カルトなファンには人気の1枚。

“Schooldays”

爽やかなギターアルペジオに歌が乗り、やがて力強いバンドアンサンブルへ繋がる「静から動」への展開が心地良い。ローリー参加直後のウィッシュボーン『There’s the Rub(永遠の不安)』(74年)の冒頭 “Silver Shoes” はこれを下敷きにしたのではないか。想像が膨らみます。


“The Disaster”

本作は徐々にハードな演奏に移って、やがてクライマックスを迎えます。唐突なギターフレーズから始まるこの曲には、ウィッシュボーンがパンク/ニューウェイヴ期に英国ハードへと回帰した『 No Smoke Without Fire(因果律)』(78年)収録の “The Way of the World (Part 2)” を思い浮かべるのは私だけでしょうか。

『ライブ・BBC・セッションズ 1972‐73』
ホームのBBCライブ音源集。『アルケミスト』全曲の生演奏も収録。こっちの方が良い。

ホームは4作目を製作するもリードボーカルのミック・スタッブスが脱退。残された3人はアル・スチュワートのバックバンドとして1974年5月から6月にかけて米国をツアーします。この時テッド・ターナーの脱退が決まっていたウィッシュボーン・アッシュも米国をツアーしており、かつてホームと共演の経験から、ローリーに加入の打診があったようです。これにてホームは解散。
他のメンバーは、ドラムのミック・クックが英国ブルースロックのグラウンドホッグスに加入。ベースのクリフ・ウィリアムズは紆余曲折を経てAC/DCに参加して長きに渡って活動する大成功を収めています。

ホームの作品を通して聴いていくと、ウィッシュボーン・アッシュが何故ローリー・ワイズフィールドに白羽の矢を立てたのか、本当の理由が見えてきます。米国志向を強めるウィッシュボーンにとって、ローリーがうってつけの存在だったことは事実ですが、寧ろ「同じ匂いのする」叙情性の持ち主だったことが真の決め手だったように思えてきます。のちにウィッシュボーン・アッシュを牽引する程の存在になっていくローリーはまさに中興の祖。そのルーツがホームには眠っています。

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